NASAが宇宙に連れて行くのは、グーグルでもシリでもなく、アレクサ

僕らが使っているアレクサが、宇宙に行くと決定した。宇宙船の乗務員を助けるためだ。でも、それだけじゃない、宇宙で学習したことを、僕ら向けのサービスに活かす目的もある。

お馴染みのアレクサが搭載されるのは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙船オリオン号。アメリカのテック系メディアがニュースにしている。

アレクサが宇宙船で何をするかというと、小難しいデータ計算なんかじゃなく、乗務員の生活や仕事のアシスタントだ。もともとアレクサは、人と話しながらアシストするために生まれた人工知能。だから、それにふさわしい仕事をする。

「スター・トレック」というSFテレビドラマシリーズに、宇宙船の乗務員たちがコンピューターに話しかけ、未知の惑星の情報を教えてもらったり、宇宙船の現状を調べたり、人生相談したりする場面があるんだけど、これが「現実になる」とNASAの担当者は言っている。

宇宙船「オリオン」は月へ行く有人宇宙船として最も進んだものですが、音声起動(ボイスアクチベーション)テクノロジーは、そのレベルをさらに高めるでしょう。SFの宇宙船に出てくるような対話型コンピューターシステムが、次世代の宇宙探査旅行では現実になるのです。

——NASA ジョンソン宇宙センター 「オリオン」プログラムマネージャー Howard Hu(NASA ニュースリリース

「オリオン」の1回目の打ち上げは、2022年2月の予定。この時は無人飛行なので、宇宙船内のアレクサに話しかける乗務員は乗っていない。その代わり、地上で乗務員のふりをしたチームが、無線を通して、アレクサにいろいろ話しかけることになっている。例えば宇宙船の飛行速度を尋ねたり、異常はないか尋ねたり、船内の照明の明るさを変えるように命令したり……。こうやってテストをして、2回目以降は、実際に飛行士たちが乗り込む。

もちろん、アレクサが宇宙船で働けば、そのあと、僕らにもいいことがある。具体的にはまだはっきりしていないが、少なくともアマゾンは、ニュースリリースの中でこう言っている。

(アマゾンの)エンジニアは、アレクサが宇宙滞在中に学んだことを活用して、地上のユーザーに向けたアレクサのサービスを向上させることになっています。

アレクサが乗務する宇宙船「オリオン」は、月面基地や人類の火星移住を視野に入れたNASA「アルテミス計画」の一環だ。今後数回打ち上げられ、とりあえず月の周りを回る人工衛星を作り、そこから人を月面に降ろす。さらには月面基地を作り、そこを足がかりに火星にも進出する。

アレクサは、この間ずっと乗務員をサポートするだろう。火星に移住した人類が使うのも、アレクサかもしれない。

そう考えると、今アレクサを使っていることが、ちょっと誇らしく思えてくる。