脳出血で麻痺の夫に、自由と安全をーアマゾンEcho 使い方いろいろ(第13回)

Echo/アレクサに、決まった使い方なんてない。みんな自分の都合に合わせて使っている。僕がアメリカで見聞きしたり、ユーザーフォーラムで読んだ実例を、読み物風に紹介しようと思う。今回はその13回目、半身麻痺の夫を持つCさんの場合。

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Cさんのことはユーザーフォーラムで知った。夫の障害の深刻さと、こう言っちゃ何だけど、余分なおもちゃみたいなEchoの組み合わせが対照的だった。その頃から、僕は、スマートスピーカーの有用性に興味を持っていて、Cさんと数回やり取りしていろいろ教えてもらった。

CさんがEchoを買ったのは、もともとは夫のためじゃない。たんに、新しいモノが好き、というだけの理由だった。

ところがその後、夫が脳出血に。命は取り止めたものの、半身に麻痺が残り、ほとんど動けない状態で生活することになってしまった。

Echoが夫のためになる、と気づいたのは、その時だったそう。

彼女はまず、家の電球やコンセントを、WiFiでコントロールできるアレクサ対応のもの(いわゆるスマート家電)に替えた。こうすれば、声でアレクサに指示するだけで、いろいろな物のスイッチをオン/オフ出来るようになる。声でできるから、体を動かせない旦那さんにはとても都合がいい。

このテのハイテク便利機器には、大抵、面倒な設定作業がつきものだけど、Cさんは、それを面倒臭がらず細かくやった。なので今は、家の1つずつの電球全部を、声で点けられるようになっている。それだけじゃない。必要な2つとか、3つの電球を、まとめてオン/オフすることもできるようになった。

(※注 家電品のオン/オフについて詳しいことは、アマゾンサイト内の『スマートホームをはじめよう』ページに、わかりやすく書かれている)

もう一つ、Cさんの夫は、以前は、好きな時に音楽を聴くこともできなかった。オーディオプレーヤーのタッチ操作ができないからだ。でも、Echoなら、声で音楽をリクエストして聴ける。(曲名やアーティスト名でリクエストしてもいいし、静かな曲を、とか、ヒットしてる曲を、とかの大雑把なリクエストでも、アレクサは数万曲のストックから選んで流してくれる)いつでも好きな時に、自力で音楽を聴けるので、旦那さんはとても喜んでいるそうだ。

(※注 こうするには、Amazonミュージックなどの音楽配信サービスに登録しておかなければいけない。音楽配信サービスには無料版、有料版がある。Amazon以外の配信サービスでも、アレクサに対応していれば可)

他にも、彼は、スポーツ試合の途中経過を(得点が何対何か)を、よくアレクサに尋ねているそうだ。どこだかのチームの熱狂的なファンらしい。

夫だけでなく、Cさんもよく使うアレクサの機能に、ショッピンリストとやることリストがある。アレ買っておかなきゃ、と気づいたとき、夫もCさんも、夫婦共有のショッピングリストに声で書き込んでおく。こうしておけば、あとでCさんが買い物に行った時、スマホでリストを開き、漏らさずに買えるというわけだ。同じ様に、「やることリスト」も、声でどんどん書き込んで使っているという。

(※注 ショッピングリストもやることリストも、早い話、スマホ内のメモ帳。アレクサに言ったことが、文字になって書き込まれる。なお、ショッピングリストに書き込んだからといって、アマゾンに注文されるわけじゃない)

アレクサは、夫を介護するCさんを助けてもいる。夫を車でどこかへ連れて行くとき、Cさんは前もって夫の身支度をするわけだけど、それをしながら道路情報や天気情報をアレクサに尋ねている。こうすれば、夫の服を決めやすくなるし、目的地までの所要時間も見積もれる。特に、出発時間が迫っていて忙しい時、手を止めなくていいから便利なのだそう。

さて、ここまでは、Echo/アレクサが麻痺の旦那さんの生活を、快適にしたことを書いて来た。次は、もっとシリアスな話題だ。

旦那さんは指を動かせないので、電話をかけられない。だから、緊急時に助けを呼べない。そこでCさんは、自分や親戚の携帯番号をEchoに登録して、アレクサを使って声だけで電話をかけられるようにしている。ショートメッセージも送れるようにしている。(これと全く同じことはアメリカでしかできないけど、後で書くように、似たことなら日本でもできる)これなら、夫に何かあっても、声さえ出せれば、SOSのメッセージを送れるというわけだ。

日本のEchoの場合、携帯電話回線を使う電話はかけられない。けれど、2台のEcho同士で、インターネット電話をすることならできる。この場合も、声で「何何さんにかけて」と言うだけで繋がるし、メッセージも残せる。もし親戚や知人の家にEchoがあれば、そこを緊急連絡先として登録しておくといい。(これについての分かりやすい説明が、アマゾンサイト内の『Alexaで大切な人と話そう』ページにある)

世の中の大部分の人にとって、Echo/アレクサは大して重要なものじゃない。あれば便利、という程度のものだと思う。そんなEchoが、Cさんの家では、暮らしに欠かせない大事な役割を果たしている。「Echoのおかげで、動けない夫ができることが格段に多くなり、家の中での自由度と安全が増しました」とCさんは言っている。

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