老齢の親にとってEchoは魔法ーアマゾンEcho 使い方いろいろ(第14回)

Echo/アレクサに、決まった使い方なんてない。みんな自分の都合に合わせて使っている。僕がアメリカで見聞きしたり、ユーザーフォーラムで読んだ実例を、読み物風に紹介しようと思う。今回はその14回目、僕の知り合いのお母さんの例だ。

全26回『アマゾンEcho 使い方いろいろ』連載目次→

僕が仕事の関係で知り合ったGさんには、95才になる母親がいる。このお母さん、気持ち的にはとても若い。世の中で起きている刺激的なことに関心があり、スポーツの試合には熱狂し、知識欲も旺盛だ。けれど筋肉の衰えが酷く、自力ではほとんど動けない。視力も相当弱っている。

こんなお母さんは、Echoのヘビーユーザーだ。目がよく見えないので、声で操作できるのがいいという。例えば、知らないことをアレクサに(口で)質問すれば、アレクサはインターネットで検索し、必要な答えを声で伝えてくれる。他にも、その日のニュースを尋ねればニュースの要約を、天気を尋ねれば天気情報を、応援するチームの試合結果を尋ねれば、勝敗と得点を声で教えてくれる。尋ねたいことがないときは、アレクサにジョークを言わせて遊んだりもできる。もちろん、アレクサはいつも完璧に答えられるわけじゃない。けれど、大部分のことは答えてくれるので、Gさんのお母さんは満足している。

こんなふうに、Echo/アレクサをパソコンやスマートフォンに代わる情報源にするのは、視力が弱った高齢者にとって珍しくない。これを読んでる人の中にも「そのくらい知ってるよ」という人がいると思う。でも、次に書くのは、やや特殊な例だ。

Gさんのお母さんは、もともと読書が大好きだった。いわゆる「本の虫」だった。視力が落ちて字が見えづらくなってからは、CDやカセットテープ版のオーディオブック(ナレーターが本を朗読した録音)を、図書館で片っ端から借りて聞いていた。けれど、高齢なのでプレーヤーの操作に一苦労する。まず、手が震えるので、CDをよく取り落としてしまう。それに、トレーに上手くセットできない。さらに、ずらりと並んだボタンに目を近づけないと、どれを押していいかが分からない。

今はEchoがあるので、お母さんは苦労していない。オーディオブックの配信サービスを契約して、アレクサに声で指示するだけで好きな本を聴けるようにしてある。図書館に足を運ぶ必要もなければ、CDやカセットをセットする必要もない。ボタンを押すこともなく、声で操作して、好きな本を存分に聴いている。

(※注 こうするには、オーディオブック配信サービスと契約しなきゃいけない。契約後に、Echo/アレクサと連携するように設定すると、Echoを通して何万冊もの本を聴けるようになる。早送りや巻き戻し、ブックマークなども、声の指示でできる。これができるオーディオブック配信サービスは、日本では今のところ、アマゾン系列の「オーディブル(Audible)」しかない)

Echoがこんなふうに役立つのを見ているGさんは、友人たちにも勧めて回っているそうだ。彼らの親は大体が80代。多かれ少なかれ、Gさんのお母さんと似た状況にある。

Gさんからそんな人たちに向けた言葉を、最後に紹介しておこう。

「Echoの機能は、ハイテクに詳しい若い人にとってはつまらないものかも知れません。でも、高齢の人たちにはとても便利なのです。もしもあなたの大切な人が、歳をとってキーボードが打てなくなったり、物がよく見えなくなったり、自由に歩けなくなったりしたときは、Echoを贈ってあげてはどうでしょうか。

ある人が『十分に進歩したテクノロジーは魔法に近いものになる』と言っていました。私は全くその通りだと思います。老齢の親にとって、Echoはまさに魔法です。驚くほど生活を快適にしています」

全26回『アマゾンEcho 使い方いろいろ』連載目次→