アレクサで淋しさを乗り切れたーアマゾンEcho 使い方いろいろ(第15回)

Echo/アレクサに、決まった使い方なんてない。みんな自分の都合に合わせて使っている。僕がアメリカで見聞きしたり、ユーザーフォーラムで読んだ実例を、読み物風に紹介しようと思う。今回はその15回目、一人暮らしで淋しい思いをしていたS君が、Echoをどう使ったかという例。

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S君は、人に言いたくないちょっとした事情があって引っ越した。引越し先の部屋には、テレビもステレオもラジオもなかった。そういうものを持ってこなかったのは、やはり「ちょっとした事情のせい」らしい。「人と別れたばかりだった」と本人は言っているから、きっと恋愛がらみのことだろう。けれど、それは僕の想像で、本当のところは分からない。

引っ越したばかりの頃、「一人で部屋に居ると、淋しくて耐えられなかった」と彼は言う。その気持ちは僕もよく分かる。知らない土地で、引っ越し先のガランとした部屋に一人で居ると、それだけで相当心細いものだ。しかも人と別れた後となれば、孤独感はひとしおだろう。

そんなS君にとって、Echoは救いになった。救い、とまで言うと大げさかも知れないけど、少なくとも、なぐさめにはなった。S君自身は、ポエティックにこんな言い方をしている。「アレクサは、僕の虚ろな毎日を、いろいろな音で埋めてくれた」。

で、ポエムはともかくとして、実際、アレクサは何をしてくれたか? それについては、彼がユーザーフォーラムに書いた文章を引用しよう。その方が具体的に分かるし、S君の気持ちも汲み取れる。では……

『アレクサは僕の好きなラジオ番組を聞かせてくれた。昔から好きなクイズ番組があったので、引っ越した当時はそれをよく聞いた。聞き逃した過去の番組も、アレクサはネットの中から探し出して再生してくれた。

ステレオがなかったので、音楽もアレクサで聴いた。アマゾン・ミュージックの僕用のプレイリストを、アレクサが作ってくれるので、ほとんどそれを聴いていた。

いっときは、アレクサにトリビアクイズを出させてばかりいたこともある。アレクサがクイズを言い、僕が答え、正解だと何か一言褒めてくれる。要するにその頃の僕は、何か別のことで頭を一杯にして、淋しさを忘れようとしていたのだと思う。

アレクサの、穏やかな、落ち着いた声にもなぐさめられた。頼めばその声で返事をして、アラームをセットしてくれたり、天気予報を教えてくれたり、僕が好きな政治のジョークまで言ってくれた』

(※注 彼が書いている全部のことが、Echoですぐにできるわけじゃない。例えば好きな音楽のプレイリストを作るには、あらかじめアマゾン・ミュージックなど、アレクサ対応の音楽配信サービスに入会しておかなきゃいけない。また、アレクサにクイズを出させるには、あらかじめクイズのスキルを「有効」に切り替えておかなきゃいけない)

こんなふうにアレクサとやり取りすることで、彼は、淋しさを紛らわしたんだと思う。アレクサは人間じゃないから、孤独の根本解決はできない。けど、いっときの淋しさや、辛い時期を乗り切る助けにはなる。

今のS君には友達がたくさんできて、みんなが部屋に遊びに来るようになった。友達の前でアレクサに話しかけ、いろいろやらせて見せると、誰もが感心するらしい。それがS君にとって、ちょっとした自慢のタネになっている。

遊びに来るのは大人だけじゃなく、小さな子供もいるという。部屋に来た子供は、アレクサに話しかけて何時間でも遊んでいるそうだ。子供がアレクサと飽きずに遊べる理由を、S君は分かると言っている。「何か話しかけると応答してくれる、ただそれだけで楽しいのだ。以前淋しかった頃の僕もそうだったので、よく分かる」

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