アレクサは独り身になった父のコンパニオンロボットーアマゾンEcho 使い方いろいろ(第16回)

Echo/アレクサに、決まった使い方なんてない。みんな自分の都合に合わせて使っている。僕がアメリカで見聞きしたり、ユーザーフォーラムで読んだ実例を、読み物風に紹介しようと思う。今回はその16回目。母が亡くなってから一人淋しくしていた父親に、EchoをプレゼントしたSさんの話。

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Sさんの両親は仲が良かった。父親は大雑把で線の太いタイプ、母親は細かい所まで気がつく几帳面タイプ。正反対と言ってもいけど、かえってそれがハマっていて、2人は仲睦まじくやっていたそうだ。

ところが1年前、不幸が襲った。具体的なことをSさんは言わないけれど、母親が何かの病気で亡くなってしまった。その後父親はガックリと気落ちし、すっかり元気をなくしてしまった。

娘のSさんは今は独立して、離れた所で暮らしている。仕事もある。実家で一人きりの父親は心配だけど、一緒に住むのは簡単じゃない。そこで、SさんはEchoを買い、父にプレゼントした。彼女は自分でもEchoを持っていて、Echoがあると一人暮らしが楽しくなると知っていたからだ。

で、父親の反応はどうだったかというと、全然喜んでくれなかった。母親は元技術者でハイテクに詳しかったけど、父親はハイテク音痴もいいところ。ハイテク機器を毛嫌いしていたから、Echoが家に届いた時も「こんなもん必要ない」という態度だったそうだ。

しかしSさんはめげなかった。放っておけばEchoは物置行きに決まっている。だから、その場でSさんが初期設定をやってしまった。彼女もどちらかといえばハイテク音痴。けれどEchoの初期設定は3分くらいでできたそうだ。こうして、Echoを使える状態にして、とにかく父の所に置いておいた。

(※注 Echo/アレクサの初期設定で難関といえば、WiFiのパスワードを入力することくらい。他は、画面の指示に従って選択ボタンを押していくだけ)

それから数ヶ月すると、何だかんだ言っても父親は、Echoを使っていた。例えば、出かける前に、行く先の場所の天気をアレクサに尋ねたり、車でいつも通る道路の混み具合を尋ねたり、あるいは、その日のニュースの要約を聞いたりするようになっていた。

Echoに操作マニュアルみたいなものは付いてない。それがかえって、ハイテク嫌いの父親には良かったらしい。Echo/アレクサに適当なことを話しかけるうちに、自然と使い方が分かってきたようだ。

父親はアレクサで音楽も聴いている。これはSさんがやり方を教えた。曲名やアルバム名を言えば、アレクサがアマゾンミュージックの中から探し出してかけてくれる。ジャズ、とか、ロックといったジャンル名や、「何か静かな曲」といった大雑把なリクエストでもいい。アレクサはそれなりの選曲をしてくれる。

(※注 こんなふうにアレクサに選曲させるには、アマゾンミュージックなどの音楽配信に入会しておかないといけない。Sさんの場合、母親がいた頃から夫婦ともに入会していたので、手続きも設定も不要だったそう)

Echo/アレクサのいいところ、そして一番面白いところは、全てを声で操作する点だ。その場で頭に浮かんだことを、直感的に、シンプルな言葉でアレクサに伝えればいい。何をするにも、アレクサと言葉のやりとりがある。だから「使っていて楽しい」とSさんは言う。「アラームをセットしたり、買い物のリストを作ったりという日常のつまらないことが、楽しくなるんです」と。

(※注 買い忘れしたくない物の名前をアレクサに言うと、スマホの専用メモ帳に、アレクサが自動で書き込んでくれる。スーパーに行った時、開いて確認できるので便利)

こういう言葉のやり取りが、彼女の父親にもいい影響を与えた。最初こそEchoに懐疑の目を向けていた父親だったけど、今はすっかりアレクサのファンだ。

「アレクサが亡くなった母の代わりになるとは言いませんが、父がアレクサとのやり取りを楽しんでいるのは確かです。アレクサは、例えて言えば、コンパニオンロボットみたいなものです。一人になった父のそばで、毎日の暮らしを活気づけています」とSさんはいう。

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