スマートスピーカーは身障者をサポートする:英オフコム調査結果

スマートスピーカーは、障害のある人を実際にサポートする。このことが、イギリス情報通信庁(オフコム)の調査ではっきりした。そのレポートから、事例と利用者(障害者)のコメントを紹介しよう。

身体障害であっても神経障害であっても、スマートスピーカーがあると、日常の暮らしが楽になる。例えば次のようなケースだ。

  1. 歩行困難な人は、移動しないでも、声だけで家電品を操作したり、ラジオの選局をしたり、ニュースなどの情報を得たりできる。
  2. 視覚障害のある人は、耳から情報を得られる。スマートスピーカーが喋るので、スクリーンの文字を読む必要がない。
  3. 識字障害のある人は、単語の発音をスマートスピーカーに聞かせ、綴りを調べられる。(識字障害があると綴りを覚えられない)
  4. 発達性言語障害や発声障害のある子供は、スマートスピーカーとの会話が言葉の練習になる。(スマートスピーカーは、相手の言葉が変でも決してバカにしない)

オフコムのレポートには、車椅子の30代男性の例が詳しく紹介されている。介護人によるサポートを受けながら両親と同居する彼は、自室にスマートスピーカーを1台持っている。

そのスマートスピーカーは、移動困難な彼の声に反応して、様々なことをこなす。生活に必要な行動の助けになる。例えば朝はアラーム時計になり、昼間はニュースやラジオ、ポッドキャスト、音楽などを通して、彼と世の中を繋ぐ接点となる。照明のオン/オフや家電品操作も、スマートスピーカーが彼の声に反応して行なう。買いたい物があるとき、彼は、スマートスピーカーに言って、一家共有の買い物リストにそれを追加させる。スマートスピーカーは、こんなふうに車椅子の彼の能力を広げ、自立性を高めている。下にあるのが彼自身のコメントだ。

「家の中の環境(照明やエアコンなど)をコントロールすることも、声で指示するということも、そして、それ以外の様々な機能も、僕をはじめとした障害のある人々にとって非常に重要だ。生活全般において自立するために……そして、生きる目的を維持し続けるために必要なものだ」

レポートには、他にも様々な障害のある人たちの声が紹介されている。例えば、音声のやり取りを便利に感じる視力障害の女性。

「私は、左目が加齢黄斑変性症と診断された。おそらく右目もその初期段階だろう。加齢黄斑変性症は進行を遅らせることはできても、治癒することはない。なので、今から、アレクサのような音声アシスタントの使い方を覚えるようにしている。特に音楽、天気予報、そしてニュースをアレクサで聞くことが増えた」——アマゾン・エコー(アレクサ)所有 女性 年齢65才以上

ある歩行困難の女性は、健常者にはわからないスマートスピーカーの便利さを強調する。

「部屋の中にパソコンがあったり、2階にパソコンがあったりするのに、わざわざアレクサに訊いて情報を教えてもらうのは、普通なら馬鹿馬鹿しいことだろう。しかし、家の中の移動が困難な私にとって、これは大きなこと。最初はアレクサを軽く見ていたが、アレクサにいろいろなことをやらせて生活が楽になるなら、もっと重視するべきだと思う」——アマゾン・エコー(アレクサ)所有 女性 年齢60才前後

自閉症の子を持つ母親も、スマートスピーカーに助けられている。

「私の8才の息子は自閉症スペクトラム障害で、喋るのが極端に遅い。けれど、アレクサに話しかけることで自分の喋りに自信を持ち、1日1000回くらい『ヘイ! アレクサ』と声をかけている。また、それとは別に、アレクサに助けられたこともある。息子は、名前を呼ばれたり声をかけられたりしても、ほとんど反応することがない。なので聴覚障害を疑っていたが、アレクサの言うことにはいつも反応し、嬉しそうに話しかけているのを見て安心できた。後日、聴覚検査をしてみると、やはり耳は聴こえているとわかった」——アマゾンEcho(アレクサ)所有 女性 年齢40才前後

ほぼ寝たきり生活のある男性は、雑事を人に頼らなくてよくなることに、スマートスピーカーの価値を感じている。

「スマートスピーカーは多機能で、いろいろなことが出来るのがいい。そのせいで、僕は、家の中で自立してやっていける。父母や介護人は、5分ごとに立ち上がって僕の面倒を見なくてよくなる。例えばついさっきも、スマートスピーカーに声をかけて部屋の照明を点けた。スマートスピーカーを持っていなかった数年前は、こうは行かなかった。人に頼んでスイッチを点けてもらわなければならなかった。また、僕をベッドから出すためにいつも介護人が家に来てくれるのだけど、その時間を知らせるアラームでさえ、以前は人に頼んでセットしてもらっていた。他にも人に頼っていたことがいろいろあるが、多機能なスマートスピーカーのおかげで自分で出来るようになった。僕にとってこれがとてもいい」——アマゾン・エコー(アレクサ)所有 男性 年齢30才前後

スマートスピーカーのメーカーは、障害のある人たちをメインターゲットにはしていない。だから、障害者向けのプロモーションもしていないし、宣伝もしていない。けれど、現実として、スマートスピーカーが障害者をサポートしていることは確かだ。