先日、BUSINESS INSIDER JAPANの記事『「ほぼ原価で売る」家電メーカー・アマゾンの破壊的ハードウェアビジネスの全貌』を読んで驚いた。Echoも含めて、KindleやFire TVといった自社ブランド品を、アマゾンはほぼ製造原価で売っているというんだ。僕もEchoやEcho Dotを使っていて、「これって安い買い物だったんじゃないか」と思う時があるけど、その理由がわかったよ。
BUSINESS INSIDERの記者(ITジャーナリストの西田宗千佳さん)が「ほぼ原価で売る」なんて書いている根拠は、アマゾンの上級副社長デイブ・リンプ(Dave Limp)という人の発言だ。
この人は社長ジェフ・ベゾス氏の直属の部下、「側近」とも言われていて、アマゾンで相当上の人。今月初旬に日本に来ていて、記者の西田さんがインタビューしたらしい。
リンプ氏はアマゾンの経営戦略についていろいろ語っているんだけど、その中で、Amazon Echoを含めたアマゾンブランドの家電品についてこう言っている。
販売価格はほぼ原価に等しい
リンプ氏:我々は「プレミアムプロダクトをノンプレミアムな価格で」提供することを常に考えています。ビジネスモデルとしては、ハード自体を売ることで利益を得るのではなく、ユーザーが「使う」ことで利益を得るスタイルです。なので、デバイスの販売価格は製造コストに近い。そこから「使ってもらう」ことで利益が出ます。
——BUSINESS INSIDER JAPANの記事より引用
プレミアムプロダクト云々という部分は経営者特有の空疎な表現に聞こえるけど、その次の「ハード自体を売ることで利益を得るのではなく、ユーザーが「使う」ことで利益を得るスタイルです」というのは、信じられる気がする。
携帯電話の会社がちょっと前までこれと同じやり方をしていて、携帯機を無料で配ってたわけだからね。機械そのものはタダ、とか、激安にしておいて、通話料で利益を得る、というやり方。
Amazon Echoの場合、いくら使っても使用料も通話料もなーんにもかからないけど、有料音楽配信のAmazon Music UnlimitedやPrim Musicへの誘惑が多い。つまり、そういうところの会費から、アマゾンは利益を得ようとしてるんだろう。あるいは、プライム会員になってもらって、アマゾンでたくさん買い物をしてもらう、とか。
ともかく、こういう戦略でいっているから、アマゾンブランドの機械の「販売価格は製造コストに近」くなっているようだ。
使う人に新モデルへの買い替えを強要しない
リンプ氏はこんなことも言っている。
(このような戦略で)重要なのは、「アマゾンのクラウドサービスと(デバイスが)密接につながっていること」です。我々はデバイスとクラウドのソフトウェアのアップデートに注力します。例えば「Echo」の場合には毎週、時には毎日アップデートが行われました。
——BUSINESS INSIDER JAPANの記事より引用
Echoは言ってみればただの機械。ユーザーにいろいろサービスしてくれるのはクラウド(インターネット上)にある人工知能アレクサだ。
リンプ氏は、アレクサがやってくれるサービスを充実させたり、使う上で差し障りが出ないようにするために、「アップデートに注力する」と言っている。
で、こういうアマゾンの戦略は、使う人に新モデルを無理に買わせないのだそう。
リンプ氏:クラウドによって価値を高めていくことのメリットは、消費者に「買い換え」をプッシュしなくてもいい、ということです。
(一般の)家電メーカーはソフトウェアのアップデートだけでは利益を産めません。だから、数年もするとソフトウェアがアップデートされなくなる。しかし我々は、3年後でも5年後でもアップデートできる。それを前提にビジネスモデルが組み立てられているからです。——BUSINESS INSIDER JAPANの記事より引用
確かに一般の家電メーカーは、表立っては言ってないけど、数年で新モデルへの買い替えを強要しているように思える。
リンプ氏の言うアマゾンの戦略が今後もずっと続くかどうかは分からない。けれど、今のところ、新モデルへの買い替えを無理強いせず、末長くアップデートを続けてくれると言っているのは嬉しい。